タントはアラアラ山を見上げて、深呼吸をした。

「よし、これで準備は万全だ!」

彼の前には、大きなリュックサックが置いてあり、中には乾燥させたシャドウリーフがぎっしり詰まっている。

アラアラ山の頂上を覆い尽くす化け物の植物。それは鋭い葉と太い枝を持ち、まるで山全体が生きているかのようだった。

どんな勇者も近づくことができず、人々はドゥーム・ツリーを恐れて山を避けていた。

でも、タントは違った。

「戦う必要なんてない。知恵を使えば、きっとなんとかなる」

そうつぶやきながら、彼は自分の作戦を心の中で繰り返した。

この化け物の植物は、特定の野草の匂い、つまりシャドウリーフの匂いを極端に嫌うことを、タントは突き止めたのだ。

その匂いを利用すれば、この恐ろしい植物を山頂から追い払うことができるかもしれない。

タントは村人たちから集めたシャドウリーフを、何日もかけて乾燥させた。

村の広場には、乾燥させたシャドウリーフの山ができた。

「本当にこんなことであのドゥーム・ツリーを追い払えるのかい?」

村の老人が心配そうに尋ねた。

「やってみなきゃわからない。でも、これが一番安全な方法なんだ。」

タントはそう答えながら、丁寧にシャドウリーフを袋に詰めていった。

そして、装置の準備だ。

タントは山のふもとに、小さな風車をいくつも設置した。

その風車には、乾燥したシャドウリーフの粉末を散らす仕掛けがついている。

風向きを計算して、匂いが山頂まで届くように調整した。

「さあ、始めるぞ!」

タントは風車のひとつを回し始めた。

カラカラと軽快な音を立てながら風車が回ると、野草の匂いが風に乗って空に広がっていった。

山頂のドゥーム・ツリーは最初、静かにしていた。

しかし、数時間も経たないうちに変化が現れた。

植物の枝がざわざわと揺れ始め、葉が縮むように見えた。

「効果が出てきたぞ!」


タントは歓声を上げた。

彼はさらに多くの風車を回し、匂いを山頂に送り込んだ。

次の日、タントは山の中腹まで登って様子を見に行った。

山頂を覆っていた巨大なドゥーム・ツリーは、明らかに小さくなっていた。

鋭かった葉はしおれ、太い枝は力を失って垂れ下がっている。

「あと少しだ。」

タントはそう言って、さらに風車を増やした。

匂いを嫌がるドゥーム・ツリーは、ついに自ら山頂を放棄し、縮小していった。

数日後、村人たちが集まる中、タントは最後の風車を止めた。

山頂を覆っていたドゥーム・ツリーは、もはや小さな茂みに過ぎなかった。

「タント、やったな!」

村の子どもたちが駆け寄ってきて、彼を取り囲んだ。

大人たちも、タントの成功を心から喜んでいた。

その知らせはすぐに国王の耳にも届いた。

王宮でタントは国王に呼ばれた。

「タント、よくぞ山を救ってくれた。君の知恵と勇気に、国民一同が感謝している」

国王はタントに勲章を授け、その功績をたたえた。

こうしてアラアラ山は再び人々のものとなり、村には笑顔が戻った。

タントは静かに山を見上げ、心の中でつぶやいた。

「武力じゃなくて知恵で解決する。それが一番だ」

そして、彼は新たな冒険に向けて歩き出したのだった。

 

つづく

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