7
タントはアラアラ山を見上げて、深呼吸をした。
「よし、これで準備は万全だ!」
彼の前には、大きなリュックサックが置いてあり、中には乾燥させたシャドウリーフがぎっしり詰まっている。
アラアラ山の頂上を覆い尽くす化け物の植物。それは鋭い葉と太い枝を持ち、まるで山全体が生きているかのようだった。
どんな勇者も近づくことができず、人々はドゥーム・ツリーを恐れて山を避けていた。
でも、タントは違った。
「戦う必要なんてない。知恵を使えば、きっとなんとかなる」
そうつぶやきながら、彼は自分の作戦を心の中で繰り返した。
この化け物の植物は、特定の野草の匂い、つまりシャドウリーフの匂いを極端に嫌うことを、タントは突き止めたのだ。
その匂いを利用すれば、この恐ろしい植物を山頂から追い払うことができるかもしれない。
タントは村人たちから集めたシャドウリーフを、何日もかけて乾燥させた。
村の広場には、乾燥させたシャドウリーフの山ができた。
「本当にこんなことであのドゥーム・ツリーを追い払えるのかい?」
村の老人が心配そうに尋ねた。
「やってみなきゃわからない。でも、これが一番安全な方法なんだ。」
タントはそう答えながら、丁寧にシャドウリーフを袋に詰めていった。
そして、装置の準備だ。
タントは山のふもとに、小さな風車をいくつも設置した。
その風車には、乾燥したシャドウリーフの粉末を散らす仕掛けがついている。
風向きを計算して、匂いが山頂まで届くように調整した。
「さあ、始めるぞ!」
タントは風車のひとつを回し始めた。
カラカラと軽快な音を立てながら風車が回ると、野草の匂いが風に乗って空に広がっていった。
山頂のドゥーム・ツリーは最初、静かにしていた。
しかし、数時間も経たないうちに変化が現れた。
植物の枝がざわざわと揺れ始め、葉が縮むように見えた。
「効果が出てきたぞ!」
タントは歓声を上げた。
彼はさらに多くの風車を回し、匂いを山頂に送り込んだ。
次の日、タントは山の中腹まで登って様子を見に行った。
山頂を覆っていた巨大なドゥーム・ツリーは、明らかに小さくなっていた。
鋭かった葉はしおれ、太い枝は力を失って垂れ下がっている。
「あと少しだ。」
タントはそう言って、さらに風車を増やした。

匂いを嫌がるドゥーム・ツリーは、ついに自ら山頂を放棄し、縮小していった。
数日後、村人たちが集まる中、タントは最後の風車を止めた。
山頂を覆っていたドゥーム・ツリーは、もはや小さな茂みに過ぎなかった。
「タント、やったな!」
村の子どもたちが駆け寄ってきて、彼を取り囲んだ。
大人たちも、タントの成功を心から喜んでいた。
その知らせはすぐに国王の耳にも届いた。
王宮でタントは国王に呼ばれた。
「タント、よくぞ山を救ってくれた。君の知恵と勇気に、国民一同が感謝している」
国王はタントに勲章を授け、その功績をたたえた。
こうしてアラアラ山は再び人々のものとなり、村には笑顔が戻った。
タントは静かに山を見上げ、心の中でつぶやいた。
「武力じゃなくて知恵で解決する。それが一番だ」
そして、彼は新たな冒険に向けて歩き出したのだった。
つづく
最後までお読み頂きありがとうございます。この作品はランキングに参加しています。よろしければクリックをお願いします。

Follow @hayarin225240

